血霊(けつりょう)

半村良作。

※ネタバレしています

あらすじ

雑誌編集者の北川は、作曲家の額田と、取材の打ち合わせをし、その後仲間の集まりに出る。その席で額田の話になり、北側の恋人:晶子は、額田を「ステキ」と評する。

後日、撮影スタッフを連れた北川と額田は、取材のために菊山村に向かう。菊山は、昔は菊に覆われた山だったが、今は工場建設のために山が崩されている。(菊山には魔物が封じ込められているという伝説がある)

その夜、額田は縁戚の家に泊まり、北川と撮影スタッフ2人は、工事が行われている山の宿泊所に泊まることになる。
宿泊所で、窓の外を何気なくポラロイドカメラで撮ると、なぜか日本兵が写り込んでいた。一同は、「誰かにからかわれた」と思い込む。

宿泊所の食堂に移動した三人が、明るい室内で再びポラロイドカメラで撮影すると、絶対に誰もいたはずの無い場所に、また日本兵が写り込んでいる。

管理人に寄れば、その日本兵は、支那事変で戦死した真上健助伍長。菊山を崩したときに、古くからある墓が掘り返され、それから真上が目撃されるようになったという。それからというもの、墓を掘り返した作業員が何人も真上の犠牲になり、
「たたられた者は皆おとなしくなってしまい、夜になると隣に寝ている仲間に抱きつき、首を噛むようになった」
とのこと。どうやら、伍長は吸血鬼になっているらしいことに三人は気が付く。

赤い布をまとっていると被害を防げると聞き、撮影道具の赤い布を取り出すが、それを窓から奪われてしまい、窓の外を見ると、鎧武者など、昔のいろいろな時代に吸血鬼にされた者たちが「出てこい」と喚きたてていた。三人は、停めてある車に飛び乗り、東京に逃げ帰った。

北川は、編集長に事態を説明するが、当然信じてもらえず叱責される。疲れ切って、晶子を訪ねていく途中、額田によく似た白髪の男を見かける。
晶子の家に入ると、眠っている彼女の枕元に小さな白い菊が。目覚めた晶子は北川に吸い付き……

登場する吸血鬼の特徴

  • 写真に写る
  • 首から血を吸う?
  • 吸血?された相手も吸血鬼になる
  • 吸血?された者は、白髪になる
  • 日の光は平気らしいが、主な吸血?活動は夜
  • 十字架は効かない
  • 吸血鬼にされると、おとなしく、従順になるらしい
  • 犠牲者の枕元に、小さな白菊の花を一輪置く
  • 赤い色が嫌い

吸血鬼ではない可能性もギリギリある

本作の吸血鬼は、いわゆる「吸血鬼」と断定して良いのかどうか判然としない。ストレートな吸血描写は無く、吸血鬼の襲撃の様を人に説明しても馬鹿話として受け取られている。
また、襲って来た幽霊たちが実在したのだとしても、それが吸血鬼かどうかは確認されていないのだ。

最後の昌子のシーンも、昌子は吸血されてしまったのか、去っていった男は果たして額田だったのか、北川に吸い付くシーンは「吸血シーン」なのか「ベッドシーン」なのかも、すべてグレイのままである。

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