●製作:ユニヴァーサル
内容
ブラム・ストーカー作 「吸血鬼ドラキュラ」の映画化だが、むしろブロードウェイで舞台化された「吸血鬼ドラキュラ」を忠実に映画化したものといえる。
出演
ベラ・ルゴシ、デヴィッド・マナーズ、ドワイト・フライ、ヘレン・チャンドラー、エドワード・ヴァン・スローン、ハーバート・バンストン、マイケル・ヴィサロフ
スタッフ
監督……トッド・ブラウニング
製作……カール・レムリ・ジュニア
脚本……ガレット・フォート、ダドリー・マーフィー
撮影……カール・フロイント
美術……チャールズ・D・ホール
その他情報
- 本作の主演俳優は、ロン・チャニイになる可能性もあったらしい(そのほか、ドラキュラ役候補には、コンラート・ファイト、イーアン・キース、ウィリアム・コートニー、ジョゼフ・シルトクラウト、ジョン・レイ、チェスター・モリス、ポール・ムニらが挙げられた)
- 本作は、かなり予算が限られ、そのことについて監督も、俳優陣も、不満を持っていたらしい
- 本作の撮影期間は、1930.9~1930.11。撮影開始から完成まで、約二か月間だった
- オープニングで、BGMに「白鳥の湖」が流れるのが、初見の頃の私には不思議でたまらなかったが、「白鳥の湖」は、この時代の「怪しい雰囲気演出」のための定番BGMなのだそうである
- ベラ・ルゴシは、生え際をきれいなV字型にするために、ヘアピースをつけている
- ルゴシ・ドラキュラには、原作ドラキュラにある「とがった犬歯」が無い。もし、「魔人ドラキュラ」のイラストとして、牙のあるドラキュラが描かれていたら、それは描いた人がかってにつけたものである
- 御者に化けたドラキュラの登場シーンは、顔が完全に丸出しで、衣服だけで「御者に化けた」ことになっている(現在では、相当チープな映画でも許されまい)。どうでもいいことだが、このときの顔が、私には片岡千恵蔵に見えて仕方ないのである
- 本作には、監督ブラウニングの好みにより、ドラキュラ城のシーンで、本来はルーマニアには居ないはずのアルマジロが登場する(どうでもいいが、アルマジロの品種は「九帯アルマジロ」)
- なぜかブラウニングは、本作の撮影中に、はなはだ無気力だったという
- 本作は、NYのロキシー劇場にて1931年2月13日(金)に封切られた。13日の金曜日にしたのは、もちろん「演出」である
- ニューヘーブン劇場の封切りでは、客がいたずらで持ち込んだこうもりが場内を飛び回り、客に大ウケしたらしい
- サミー・デイビス・ジュニアは、幼い頃、親に隠れて本作を見に行き、恐ろしさで歯の根が合わなくなり、カチカチと震えていたために、こっそり映画を見に行ったことがばれてしまったという
- 本作の、ルゴシのギャラは、週500ドルだったという(ユニバーサルの大作の主演としては激安値段である)
- 本作は、1932年のユニヴァーサル映画では最高の収益を上げ、傾きかけていたユニヴァーサルの財政を救うものとなった
魔人ドラキュラ [ ベラ・ルゴシ ]