ジョン・ウィリアム・ポリドリ(John William Polidori)作の吸血鬼小説。
※ネタバレしています※
ポリドリ作「吸血鬼」のストーリー
夢想家のオーブレーは、ルスヴン卿という、超然と浮世離れした男に興味を持ち、共に旅に出る。
旅の途中で、ルスヴン卿が品性が疑わしい男だと気づいたオーブレーは、彼が辱めようとしていた女性を救い、彼と袂を分かち、一人ギリシアに旅する。
オーブレーは、旅先で、純真な娘、イヤンテに出会い、好意を持った。イヤンテは、古い迷信の吸血鬼のことを話してくれた。
数日後、イヤンテは、吸血鬼が出ると信じられている森の中で、何者かに首を噛まれて死んだ。亡くなったイヤンテのそばには、変わった細工の短剣が落ちていた。
吸血鬼事件のショックで、倒れたオーブレーを、仲違いしたはずのルスヴン卿が見舞いに来た。
ルスヴン卿は、心を入れ替えたと言い、先の旅を共に進もうと言う。オーブレーは、彼の言葉を信じて、二人で旅をすることにした。しかし、山道で賊に襲われ、ルスヴン卿は死んでしまう。死の間際に、「自分の死んだことは誰にも言わない」と誓わされる。
翌日、不思議なことに、ルスヴン卿の死体は、どこかに消えうせていた。
遺品を整理したオーブレーは、彼の荷物の中に、イヤンテの死体のそばにあった短剣の鞘を発見。ルスヴン卿の正体は吸血鬼なのか?
補足情報
- 本作は、発表当初、「ニュー・マンスリー・レビュー誌」にバイロン作と記載されたため、大衆にバイロン作と信じられた
- ポリドリは、邪悪なルスヴン卿を、明らかにバイロンをモデルにして描いている
- ポリドリは、バイロンの主治医
- 本作の構想は、バイロンが書きかけていた吸血鬼物語を骨子に作られたもの
- 後にノディエにより戯曲化&上演され、大ヒットした
登場する吸血鬼の特徴
- 首から血を吸う
- 吸血された側が、吸血鬼になるかどうか不明
ポリドリ作「吸血鬼」の邦訳状況
- 新人物往来社「怪奇幻想の文学 1 真紅の法悦」に収録。平井呈一訳。現在絶版。
- 薔薇十字社「ドラキュラ・ドラキュラ」に収録。種村季弘訳。
- 河出文庫「ドラキュラ・ドラキュラ」に収録。種村季弘訳。
- 大和書房「ドラキュラ・ドラキュラ」に収録。種村季弘訳。