小泉喜美子作。
※ネタバレしています※
昭和五十×年に起こった幼女殺人事件と、その犯人による昭和12年からの戦争中の回想が、平行して語られる。
作品中に、ドラキュラを意識した要素が複数うかがえる吸血鬼小説。
「血の季節」ストーリー(ネタバレあり)
昭和12年からの回想
幼い日に、主人公は、偶然知り合ったヘルヴェティア公使の子供たち、フレデリッヒとルルベルと親しくなる。
主人公は、ヘルヴェティア公使館に吸血鬼が棲んでいる状況証拠に触れながら、そうとは気づかずに過ごす。
数年後、友人のKがヘルヴェティア公使館付近で犬に噛まれる事件が起こり、Kからひそかに
「本当は犬に噛まれたのではなく、西洋人の女に噛まれた」
と聞かされる。
その数日後、主人公自身が、ヘルヴェティア公使館の付近で焼夷弾にあたって倒れ、意識を回復すると、目の前にルルベルがいた。ルルベルは、顔を寄せて、首に噛み付いてきた。
昭和五十×年の事件
青山墓地で、少女の扼殺死体が発見された。少女の首には噛み跡があり、少女が持っていた人形(金髪の西洋人形。特徴がルルベルに似ている)がなくなっていた。
金髪の人形を持った犯人の足取りを追うと、警察は広島で被爆して亡くなったはずの男に行き着く。男は、まったく逆らわずに罪を認め、幼い日の回想(上記)を話し始めた。
回想を語り終えた男は、おとなしく死刑になり、「土葬にして欲しい」と希望する。(土葬ということはつまり……)
「血の季節」に登場する吸血鬼の特徴
その他の吸血鬼的情報
- 作品中で、吸血鬼と思われるのは、主人公・ラドラック ・ ヘルヴェティア公使夫人・ルルベル・Kの5人。しかし、いずれも「想像をたくましくすれば、吸血鬼であったとも考えられる」といった描き方をされ、「吸血鬼でした」と断言されている部分は一箇所も無い
- 主人公が、どのタイミングから吸血鬼になっていたのかが、かなり漠然と濁されている
- 作品中に、「吸血鬼ドラキュラ」への言及がある
- 作者によれば、「東京のドラキュラ」として描いたとのことである