キム・ニューマン作
※ネタバレしています※
「テクニカラーのひずみ」ストーリー(ネタバレあり)
ミカイーリス・モンティは、モンティ・ヴィデオ社の経営者。デジタル技術を駆使した映像を作成する高いスキルを持ち、昔のモノクロ映画をカラー化したり、俳優の入れ替え(昔の映画に、勝手に後代のスターを当てはめてしまう)をして、まったく新しい作品に生まれ変わらせる仕事をしている。
モンティ・ヴィデオは、業界のトップを走っていたが、他社の妨害(モンティはそう思っている)を受け、技術者が何人も変死し、業務に支障が出ている。
モンティは、セキュリティを強化した自宅で、自ら「魔人ドラキュラ」の改訂版を作っていた。そこに、エージェントのサリーが訪ねてきて、映像技師のターナヴェッロが殺された不審な状況について話し始める。
ターナヴェッロは、自分がリメイク作業していた映画のシーンと、同じ殺され方をしていて、しかも、彼が死ぬときに作っていた映像の中には、殺されるターナヴェッロの姿があった。
また、ほかの技術者の死に方も、リメイクを担当していた映画の内容と、無関係ではないとサリーは語る。彼女は、「誰かが、あなたたちのリメイク作業を阻止しようとしている」と言って去る。
洗面所で鏡を見ているモンティの後ろから、誰かがやってきた。その人は、夜会服に黒マントを着て、でも鏡には誰も映っていない。夜会服の人は、モンティの喉に食いついた。
登場する吸血鬼の特徴
厳密に言うと「吸血鬼だ」とは明言されていないのだが、吸血鬼だと断定して特徴を挙げると、
- 首から血を吸う
- 夜会服に黒マントのドラキュラスタイル
- 鏡に映らない
- セキュリティシステムに感知されない
その他情報
- この「吸血鬼」が何者であるのかがわからない……「古き良き映画をリメイクから守る何かが、吸血鬼の姿を借りたもの」なのか? はたまた本物のドラキュラ伯爵なのか?
- 血を吸われたモンティが、自分も吸血鬼になってしまうのかどうかがわからない
- 作品の冒頭で、「魔人ドラキュラ」のルゴシの演技が描写される
- 邦訳は、今のところはSFマガジン1997年11月号のみ。文庫・単行本には未収録(どうでもいいが、雑誌掲載ページの挿絵は、どう見てもクリストファー・リーのドラキュラである。ルゴシかわいそう)