ウィリアム・マルコム・ヘイリー卿という、19世紀生まれで、イギリス領インド時代のパンジャブ州知事を務めたイギリスの貴族がいて、この人は、十字架二つをあしらった木箱におさめられた吸血鬼退治セットを所有していた(内容:十字架、聖水、木槌、数珠、ゴート語の聖書、真ちゅう製のろうそく立て、火薬入れ、対のピストル2丁etc)。19世紀末頃に作られたものだとのこと。(吸血鬼ファンにとっては、19世紀末とは、吸血鬼ドラキュラが書かれたころ、だ)
それが2022年になってからハンソンズのオークションに出品され、ヤフーニュースに出たために、広く一般の人の目に留まることとなった。どうも、予想以上の落札価格だったためにニュースになったようである。日本円にして、約210万円だったという。
つまり、「びっくりするほど高額だったからニュースになった」のであって、吸血鬼退治お道具箱が珍しいからニュースになった、ということではない。
吸血鬼退治グッズが、木箱にひとまとめになっている「吸血鬼退治セット」自体は、実はそれほど珍しいものではない。
ということを明らかにするために、オークションサイトの、「吸血鬼退治セット」へのリンクを貼ってみることにする。
- ハンソンズ → Hansons をVampireで検索
- サザビーズ → Sotheby’s をVampire Slaying Kitで検索
だいたいいつでも、2~3点は出品されているのを見ることができると思う。
出品物の内容を見ると、必ず拳銃が含まれている。拳銃が、何の役に立つのだろうか。まさかと思うが、銀の弾丸がこめられているのだろうか(それはオオカミ男用だ!という古典的な突っ込み案件なのだろうか)。
あと必ずあるのは、十字架と木槌と、杭みたいなものと、ろうそくである。
木槌よりも金槌の方が良いんじゃないかと思うが、重いから好まれないのだろうか。
ろうそくは、ちゃんと木箱に作り付けのろうそく立てに立てられるようになっていて、うっかり倒したりしないように配慮されている。私が今まで見てきたものは、多くが「少なくとも、一回は使用されたろうそく」だった。……道具箱を持って吸血鬼退治に赴いた、ということなのか? それとも、日常の中で「吸血鬼用だけど使っちゃえ」となったのだろうか。
使い道がわからないものとしては、注射器みたいなものとか、何かの薬品の入った(もしくは入っていた)試験管みたいなものとか、やっとこみたいなものが入っているのが見られることがある。
何を注射するの? 試験管の中身は何なの? やっとこで何すんの?
てゆーかそもそも、これはマジな道具なの? いろいろ出品されているものを見ると、素朴な木箱に、すすけた道具たちが詰め込まれているのなんかがあって、これは「マジかもしれない」と思ってしまう。
しかし、美麗な装飾をされた木箱に、美麗な道具がきっちりはめこまれて整理されているものなど見ると、「マニアックな装飾品」というか、「怪奇趣味を満足させるこぎれいな面白グッズ」なのだろうと感じる。
オークションで吸血鬼ファンが買う、ということもあるのかもしれない。