死霊の恋

死霊の恋

テオフィエル・ゴーチェ

※ネタバレしています※

ストーリー

青年僧ロミュオーは、たった一度だけ視線を交わした遊女クラリモンドと、熱い恋に堕ちる。しかし、僧であるために、愛情を封印し、勤めを果たしている。

ロミュオーが司祭になってからしばらくすると、ある婦人の危篤に終油を授けて欲しいと請われ、出向いてみると、婦人はクラリモンドであり、すでに亡くなっていた。
クラリモンドの美しい亡骸を見て耐えられず、ロミュオーは口づけする。すると、死んだはずのクラリモンドが起き上がり、「今こそ夫婦になれた」と言って再び倒れた。
この怪しい体験の後、ロミュオーは恩師セラピオン(ロミュオーの恋心を見抜いている)に、「クラリモンドの恋人は、みな悲惨な死に方をした」と聞く。

ある晩、ロミュオーの夢に、クラリモンドが現れ、その日から、毎晩の夢の中で、ロミュオーはクラリモンドの恋人としてすごすようになる。夢の中の二人は、宮殿に住み、愛し合って暮らした。ロミュオーは、次第にどちらが現実の自分か分からなくなる。夢の中のクラリモンドは、命をつなぐためにロミュオーの血を飲むが、愛する人の血を奪うことに苦悩している。

夢の生活に心を奪われているロミュオーの目を覚まさせるため、セラピオンは、クラリモンドの墓をあばき、聖水でその遺骸を砕く。
吸血鬼から開放されたものの、ロミュオーは66歳になった今も、クラリモンドへの恋心を忘れるとこができずにいるのだった。

登場する吸血鬼の特徴

  • 色白
  • 「何度か死んでいるらしい」ことが、人の噂になっている
  • 聖水をかけられると粉々になる
  • 餌食の男の腕を、ピンで刺して、そこから血を飲む
  • 血を飲むことに罪悪感を持っている
  • 多分、元は人間だったと思われる。吸血鬼になったいきさつは不明
  • 血を飲まれた側に、吸血鬼化は見られない

その他の特色

吸血鬼クラリモンドの魅力

本作に登場する吸血鬼クラリモンドは、ゴーチェの詩的な文の力か、吸血モンスターでありながら、「美と愛」のオーラを纏って魅力的である。(まことに、「吸血姫」の呼称がふさわしい!)

吸血に苦悩するクラリモンドの姿を見るにつけ、彼女は「血を飲むために男をおびき寄せよう」という目的でロミュオーに近づいたのではないように思える。むしろ、純粋に愛し合いたいがために近づき、愛の生活を保つために(吸血しなければ、自身が滅びるのである)仕方なく吸血しているのである。だからこそ、吸血される男の側も、喜んで血を差し出そうとし、クラリモンドが永遠に去った後も、いつまでもロミュオーは愛の記憶を手放せないのである。

「死霊の恋」の評価

本作は、ボードレールに激賞されている。

邦訳状況

●岩波文庫「死霊の恋・ポンペイ夜話―他3篇」に収録。田辺貞之助訳。

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