髑髏検校

横溝正史作。
「吸血鬼ドラキュラ」の翻案小説。

※途中までネタバレしています※

髑髏検校は、日本の江戸時代版ドラキュラ

上にも「吸血鬼ドラキュラ」の翻案、と書いてあるように、物語の骨格はドラキュラのものをいただいていて、それを日本の江戸時代を舞台に描きだしたもの。「ドラキュラ」と比べてしまうと、吸血鬼小説としての魅力は薄味だが(作者が、途中から濃ゆい小説にすることを断念した、と言う人もいる)、横溝ならではの舞台設定の面白さや、浪漫あふれる人物・情景、絶妙なネーミングセンスなどから、一定の数のファンを獲得し続けている。

かつて、田村正和でドラマ化したことがあり、筆者は子供のころにそれを見ている。非常に、非常に哀切な物語だったという記憶がある。田村検校は、見る者の哀れを誘う吸血鬼だった。(だったはず、である。あまりにも子供だったので、記憶を捏造している可能性あり)(正直なことを言うと、つい最近まで、あのドラマで検校を演じたのはジュリーだったと思っていた。完全に、「魔界転生」と混同したのである。「魔界転生」と混同した理由は、髑髏検校の正体があの人だからであろう)

ストーリー

房州の鯨漁師が、鯨の胃の中から紙の封じ込められた瓶を発見する。瓶の中には、長崎の孤島で、怪異を経験した鬼頭朱之介の書状が入っていた。

書状によれば、船が嵐に遭って漂流し、不知火に囲まれた島を見つけて上陸。島には、「殿様」と呼ばれる男=髑髏検校、侍女の松虫鈴虫の三人だけが住み、検校は、将軍の三女陽炎姫に異様な興味を持っている。

屋敷で時を過ごすほどに、怪しい出来事・気配が感じられるようになる。屋敷の裏の森には、三基の墓があり、「松虫」「鈴虫」「四郎」と名が刻まれていた。これを見た朱之介は、屋敷の三人がこの世のものではない事を悟る。
ある日、島に髑髏の旗を立てた船が付き、墓の中から出てきた三人をのせて出港していく。不死者たちは、「江戸へ」と言い残していった。

江戸では、陽炎姫が怪しい者に吸血され、通りかかった鳥居蘭渓に救出される事件が起こる。
後日、蘭渓の元に秋月数馬から朱之介の書状が届けられ、蘭渓は、陽炎姫の一件が、長崎の孤島からやってきた謎の検校の仕業だと知る。

蘭渓は、根岸備前守の命により、髑髏検校を討つために動き始める。
(後は読んでのお楽しみ)

登場する吸血鬼の特徴

  • 狼を操ることができる
  • 唇が赤い
  • 首から血を吸う
  • 夜だけ活動する
  • 風や雪を操れる
  • 蝙蝠に姿を変えられる
  • 大蒜が嫌い
  • 吸血した相手も吸血鬼になる
  • 影が無い
  • 体が淡い光(鬼火?)に包まれている
  • 一般的な物理攻撃は効かない
  • 倒すには、体を焼却するしかない
  • 昼間は眠っている

その他情報

  • 物語の吸血鬼事件が起こったのは、1810年。ドラキュラ伯爵の英国上陸よりもだいぶ前である

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