火の柱

レイ・ブラッドベリ作の吸血鬼小説。(吸血鬼小説、と呼ぶのをちょっとためらうような吸血鬼小説)

ストーリー

2349年、死者はすべて火葬にされ(過去に亡くなった人の死体すらもすべて掘り起こして焼いてしまう世の中になっている)、恐怖も、犯罪も、嘘も、危険も、夢想も、不思議な出来事も、一切無くなってしまった時代に、墓の中にいた吸血鬼、ラントリーが目覚める。

ラントリーは、すべての吸血鬼が滅ぼされたことを知り、その元凶である「火の柱」と、それを建てた人間を憎み、火の柱の破壊と、人間たちを自分の仲間の吸血鬼とすることを企てる。

登場する吸血鬼の特徴

  • 呼吸しない
  • 涙が出ない
  • 顔色が青白い
  • 死臭がする
  • 人を殺す描写はあるが、吸血する描写は無い
  • 死体のそばに五芒星を描き、「立て」と命ずると、起きあがって不死者=吸血鬼となって甦る、らしい(なぜ「らしい」なのかというと、作中でこの方法は成功していないからだ)
  • 吸血鬼になる要件として、「吸血鬼的なものを信じているかどうか」が必要らしい。その概念すら失うと、いくら命じられても吸血鬼にはならない、らしい
  • 吸血鬼が吸血鬼として生きて?いられるかどうかは、思念(憎悪や羨望など)があるかどうかによる、らしい

その他

  • 本作で描かれる2349年には、怪奇的なものはすべて「荒唐無稽で存在する価値の無い、不健全なもの」として淘汰されている。そのため、怪奇小説等は、すべて「2265年の大焚書」で燃やされたらしい。作中で、ラントリーはポオやラブクラフトなどの、複数の作家の本を図書館で探そうとするシーンがあるが、「吸血鬼ドラキュラ」は挙げられていない。挙げられていないが、どうせ2265年に燃やされたのだろう
  • 本作を最後まで読むと、読者は吸血鬼が滅ぼされるのを見ることになるが、それとともに、人間の心の中にある、あの偉大な領域が滅ぶのを目にすることになる

邦訳状況

創元推理文庫「スは宇宙のス」に収録。一ノ瀬直二訳

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