伝説の高級文学的エロティシズム雑誌。吸血鬼特集が組まれているため、吸血鬼ファンにとっても伝説の雑誌であった。
吸血鬼特集の目玉は、種村季弘の「吸血鬼幻想」。のちに一冊の本になった「吸血鬼幻想」は、ここから出発したものである。が、本書の吸血鬼幻想は、7ページ程度のコラムであり、これだけのために高額を出して本書を買うのは、よほどの好き者だけで良いと思う。
吸血鬼特集のほかのページは、絵と写真(というか、コラージュ?)であり、文字情報が欲しい人にとっては、現在では物足りないと思う。
一番の見どころである「吸血鬼幻想」も、今となってはほかの書籍でもっと簡単に同じ情報を得られるので、吸血鬼ファン的視点から言うと、当時の種村文を読みたい人にしかお勧めしない。
吸血鬼ファンに限定しないところで言うと、当時の「血と薔薇」の雰囲気、すなわち、澁澤龍彥編集、三島由紀夫のヌード(篠山紀信激写)、アングラの旗手たちの協力、男色や拷問を特集する内容、つまりすべての要素の合わせ技による一種独特の美と浪漫(かなり屈折したものも感じるが)を愛せる人には、なかなか得難い耽美雑誌である。
しかし、吸血鬼ファンにとっても、この雑誌は伝説の存在なので、「とにかく所有したい」という人は、持っていても良いだろう。
買うなら、当時のものを3冊揃いで買うか(血と薔薇はいわゆる三号雑誌である)、復刻版で三冊揃いで買うか、当時ものの創刊号単体で売っているのを見つけるか、文庫収録のものを買うか、ということになるが、現在一番簡単に安価に買えるのは、文庫版である。
ちなみに私は、古書屋で当時の創刊号だけが売られているのを見つけて購入した(蔵書ブログに記事がある→血と薔薇 創刊号)。揃いで何度も見かけても、私は吸血鬼と何の関係も無い号と一緒に買う気にはならなかったのだ。
血と薔薇は、吸血鬼雑誌ではないので、吸血鬼特集は創刊号だけである。タイトルが、いかにも吸血鬼っぽいので騙されそうになるが、吸血鬼情報満載では全然ないのである。