「女の一生」や、「脂肪の塊」の、あのモーパッサンの作品である。
《あらすじ》
「わたし」は、なぜか眠っているあいだに、消耗することを自覚し、病気かと思うようになる。
やがて、自分の家の中で、水差しの中の水が、勝手になくなっていることに気づく。
ためしに、寝る前に、水、牛乳、ワイン、パン、いちごなどを用意しておき、あくる朝になってそれが減るかどうかの実験をしてみると、水と牛乳が確かに減っている。
もしや、自分が夢遊病なのかもしれないと考え、自分がベッドから起きて水や牛乳を飲めば痕跡が残るように細工をしてみたが、やはり次の朝には水も牛乳も減っていた! 家の中に、何ものかが存在することを知り、「わたし」は家を出ることにする。
しばらく、パリで過ごし、また家に戻った「わたし」は、数日は何も起こらずにほっとする。
しかし、すぐに、家の中の召使が、夜中にコップを割る者がいると話しているのを聞く。そして、庭のバラが、目の前で、何者かに折り取られたように、ぽっきり折れるのを目撃する。
「わたし」は、何者かにおびえながら日をすごし、ある日、科学雑誌に「ブラジルで、狂気が流行的に発生している。患者たちの証言によれば、目に見えない何者かに襲われ、寝ている間に命を吸い取られる。そいつは、水と牛乳は飲むが、ほかのものには手を出さない、吸血鬼のようなやつだという」との記事が出ているのを見つける。自分に取り付いているのはこいつだったのか!
やがて、「わたし」は、怪物が自分の名をなのる声を聞く。その声は、「オルラ」と言った。(後は読んでのお楽しみ)